母は事情を知っているようでしたが、多くは語らず、持参した手作りのおにぎりや煮物を振る舞います。 しかし「事件」と名づけられるまでの、手がかりのない途方もない時間の中には、家族や関係者の不安があり、葛藤があり、逡巡があり、巻き込まれたかもしれない当事者に対するあふれるような愛があるのだと、呼吸を忘れるほど物語に没頭しながら、はじめて理解した。 その日、戸沢署の警察官が昨日の電話の内容の確認をしに来た。
6そんな中、規士から取り上げたはずのナイフがなくなっていることが判明して、家族は絶望します。 18年、テレビドラマ「中学聖日記」(TBS系)でデビュー、年上の教師を愛するという難役に挑み、絶大な支持を獲得する。 当初は加害者であっても生きていて欲しいと願っていた貴代美は、もう生きてはいないのかもしれないと思うようになっていました。
15実際、息子に救われた形となる家族は、再生への希望の光を見出していきますが、一抹に残る気持ち悪さが、答えのないもどかしさを巧みに映していました。
一級建築士の石川一登とフリー校正者の妻・貴代美は、一登がデザインを手掛けた邸宅で、高一の息子・規士と中三の娘・雅と共に幸せに暮らしていた。 つまり、犯人か、そうでなければ、もうひとりの被害者・・・という二分式で、一般的には、事件には直接無関係で、別の事情があって姿をくらましているだけだという、もう天気かもしれないが楽観的に心情はない。
12プロデューサーから企画を持ちかけられた堤幸彦も、原作に惚れ込み映画化を熱望したという。 貴代美は、規士がまだ帰っていないことを打ち明けます。 しかしある日、貴代美は規士の部屋のゴミ箱から、切り出しナイフのパッケージを見つけてしまい、一登に相談を持ちかけます。
16規士の部屋にあった本は、宮崎から借りたものでした。 家族の開放感…アレは享受すべきなんだろうか? ああなってしまう時世にそこはかとない不安を覚える。 内藤は事件の事実関係が明らかになったら、被害者もしくは加害者の親としてインタビューをさせて欲しいと条件を出し、貴代美の質問に答えます。
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