SHAMPOO BOY(シャンプーボーイ)｜熊本県・熊本市の美容室・サロン情報・予約｜ビューティーナビ

「もうだいじょうぶ」。必ず戻ってまいります。

－第10話－【1942年ロンドン】シャンプーボーイ

だからこそ、ひとつひとつの仕事に集中して、真剣に取り組まないといけない。ミスター・コーエンは素早くハサミを動かしながら、女性の髪をカットしていく。デューク・エリントン。

動かす技術ではないのか。

かと思うと激しく。ここをタテにゴシゴシと動かして、つづいてここをヨコ向きにゴシゴシ。ショートならマリア・カット。

そう思った。その間、100人を超えるお客のシャンプーをしたが、チップをくれる人はまだひとりもいなかった。

こんなシャンプーがあるのか。応用力をつくる。つまり視て、美容の仕事に取り入れる。

「技術は気持ちを伝える手段なんダ」「技術は、手段……」「そう、手段にすぎない」なにかとってもたいせつなことを、ダグは言っているような気がした。疲れが少しでもほぐれますように。髪には少し赤みかがり、そのまま電髪でカールをすると女優のリタ・ヘイワースのような姿になることが想像できた。

お客さまの髪全体にお湯をかけながら、表面の汚れを落とす。ヒザの上で、ダグの頭で、他の先輩たちの頭も借りて。濡れた髪をタオルで巻いて、身体を起こしてあげると兵士は言った。