あゝ、私どんなにかあなたと苦勞を一緒にしたいと騷いだでせう! どんなにかこの世の廣い、高い、強いこともしたいと、一生懸命念がけたでせう!(下略)」 といふのはノラが「私はあなたの人形妻になりました。 私の書いたものには一として主張を廣めるためと意識して書いたものはありません。 本作は、「人形の家」のノラが家を飛び出した15年後という設定で描かれ、混沌とした現代社会の中での女性の生き方、現代の家族のあり方を鋭くつきつけました。
17妻が家を出る前後の樣子や、そのあとでの夫の樣子などまで、『人形の家』のノラとヘルマーとの場合に、どこか似たところのあるのは事實である。 彼の女は僞署をした、そしてそれを誇りとしてゐる。 歌唱賞を受賞。
201879年ドイツ滞在中の作。 いわゆる女性の自立をテーマとしたイプセンの戯曲です。 けれどもそれは、エリザベットが悟りを開いて滿足して歸つてきたのでなく、たゞ自分にはもう解決の氣力がなくなつたといつて悲しく歸つてきたのであるから、實は答でなくして問題はそのまゝ殘つてゐるのである。
2[#…]は、入力者による注を表す記号です。 馬車の窓から夜の暗い中を覗いたとき、自由はいくら欲しくても、私の心は沈んでしまつて、漂泊者といふ冷い感じが身に沁みてきた。 あたし、独りでやらなくもゃならないことね。
19けれどもイブセンが『人形の家』を書くとき『謀叛』を讀んでゐたか否かは知る由がないから、『人形の家』を『謀叛』から脱化し、若しくは『謀叛』に似せたものだとはいへない。 パリーで『人形の家』が公演せられたのは、ずつとおくれて千八百九十四年四月二十日、ジムナーズで、女優レジャーン(Mme. 即ちノラは家を去らずして、無理にヘルマーに連れられ子供等の室の前に來たり、ちよつとしたる臺詞ありて、戸のところにくづをるゝ、幕下る、といふ場面に御座候。 Lord)といふ婦人が同じく『ノラ』といふ題で譯したものである。
11傳記家イェーゲル氏は更にこれをその前の作『ペール・ギュント』に求めて、ヘルマーがノラに對する利己的性質は、ペール・ギュントがアニトラの愛に對する心持と同じであるとしてゐる(Henrik Ibsen : Jaeger)が、しかし中心人物たるノラの方からみた、婦人問題としての端緒はこゝにない。